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(2)ミレニアム観光サミット第1部

「観光マーケットの質的、量的変化」
"The millennium challenge: quantitative and qualitative change of the international tourism market"
 
@ 世界観光機関概観 「観光市場の将来予測」(要旨)
  デイヴィト・デ・ヴィリエ(世界観光機関事務局次長)
過去50年間に観光業は目覚しい成長を遂げた。そういった産業が経済社会に与える影響は大きい。しかし、他の産業に比べ、その影響についてはよく知られていない。しかし米国でのテロ事件における影響等からも明らかなように、観光業が経済に与える影響は甚大である。観光は、サービスの輸出の8パーセントを占めている。成長のパターンについての予測や、消費者の動向が観光業の重要なインデックスである。
世界観光機関では、観光業2000ビジョンを通じて、長期的な観光業の予測を始めた。これは観光の予測能力の向上をめざすものである。方法論としては、過去20年間の記録やデータをもとに調査研究を実施した。7冊の報告書がまとめられた。6冊の各国の状況報告と、1冊の包括的な報告書(さらにセグメント別)から構成されている。
内容概観:
1.2000年は、大成功の年であった。シドニーオリンピック等の大きなイベントがあり、観光業は大成功をおさめた。4750億ドルの売上。一人あたり680ドル(1到着あたり)。
2.2020年における展望。ITが生活の全ての側面に入り込んでくる。一方、人々は人との出会い、ふれあいをますます求めるようになる。到着数は16億人になると予測されている。
3.米国におけるテロ事件が観光業に与える影響。短期・中期的な影響はあるが、長期的にはあまり影響はない。
4.世界の観光からの収益は、2020年には2兆ドルに達すると予測されている。すなわち、それは毎日旅行者が50億ドルを支払うということを意味する。観光業はこれからも多いに成長する可能性を秘めている産業である。
5.各地域別の観光業の成長の状況(中東、東アジア、南アジアが成長を示している。米州や欧州は観光の受け入れ地として高い地位をしめてきていたが、現在アジア太平洋地域の厳しい追い上げを受けている。)
6.旅行の種類別(遠距離、中距離、短距離)国内・海外旅行の比率。
7.観光のマーケティングの要因。ITの影響。人口構成の変化。(中高年の人々の海外旅行の増加。文化的、教育的な経験を求めての旅行が増えている。コンピューターに慣れ親しんだ世代、財政的な余裕はあるが旅行をしている時間がないというグループの開発が課題。)
 
A 基調講演概要
  「観光マーケットの質的、量的変化」 松橋 功((社)日本旅行業協会会長)
まず、米国テロ事件の被害者に心から哀悼の意を表したい。
しかし、この卑劣な行為に屈することなく、21世紀が観光の時代となることを確信する。
「Q and Qの挑戦をいかに受けて立つか」が本講演のテーマである。
最初のQは量(Quantity)である。世界観光機関のVision2020によれば過去50年の量的拡大は年率6.8%で2000年には6億4千万人に拡大し、今後も4.3%の成長を維持し、2020年には16億人に達することが予測されている。日本も海外旅行自由化後の36年間に年率14.7%の成長を維持し量的拡大に大いに貢献しているが、2020年には日本の全人口を上回る1億4千万人に達するとの予測がなされている。受け入れ国としては、同年に中国がトップに位置する一方、日本はリスト外と後塵を拝している。しかし、日本政府も国際観光振興会を通じた訪日客倍増計画をはじめ種々対策を講じており、官民一致協力して誘致の実効を期したい。
観光が21世紀最大の産業と目されるほど国際間の交流が活発化する理由として5つの要因がある。すなわち、
(1)人間はそもそも家を離れて外に出たいという欲求があり、旅は日常からの解放である。
(2)インターネットその他の通信網の発達により情報の入手が容易になればなるほど、ヒューマンタッチの触れ合いを求める。
(3)査証等国際間移動の障害の除去ないし緩和が進んでいる。
(4)空港施設、航空料金等国際航空輸送の促進に寄与する条件整備が進んでいる。
(5)長い目で世界的に家計所得の向上が期待できる。
今ひとつのQである質(Quality)は量とどう関わるか。今後の国際観光マーケットにおいては「マス・ツ−リズム」と「マチュアー・ツーリズム」の二大潮流が並存する。先進国では、リピーターが増え、マーケットが成熟することにより、質的に5つの変化が生じる。すなわち、
(1)団体旅行から個人手配旅行への個人化
(2)人と違った旅行を望む差別化
(3)特別な商品やサービスを求める専門化
(4)ITの進展に伴う直販化
(5)消費者の要望にスピーディーに対応できる迅速化
の5つである。同時に、観光業は「団体旅行対FIT」「若年層対熟・高年層」「高品質対低価格」「ネット・ビジネス対ヒューマン・タッチ」のような二極化に直面する。しかも、変化が徐々に進行した従来と違い同時並行的に対応する必要がある。さらに今後量的拡大に伴う課題として世界規模の混雑をいかに解消するかが重要である。特に、旅行者増大の著しいアジアでは、混雑解消のためにも欧米型の休暇制度の導入により旅行時期の平準化が不可欠であると同時に、環境や文化等地域の独自性を尊重した新たな旅行目的地の開拓も必須要件である。まさに、本総会のスローガンである「持続的発展(サステイナビリティー)」の具現化である。
今後将来にわたっての国際観光の発展は疑うべきもないが、平和こそが観光業のよって立つ基盤であり、「観光は平和へのパスポート」という信念のもと業界一丸となって国際観光の促進に邁進してゆきたい。
B パネルディスカッション概要
  モデレーター:アウグスト・ウェスカル(世界観光機関市場調査開発担当局長)
 
スピーカー:リチャード・ゴードン(フィリピン観光大臣)
 
(参加の機会に謝意の表明)米国におけるテロ事件という悲しい事件によって、我々の議事進行も変えざるを得なくなった。このテロ事件によって、世界の航空産業が深刻な影響を受けている。また観光業も同様の影響を受けている。米国主導で行われる報復作戦と共に、我々も観光分野での対策を講じなければならない。その対策に要する費用は大きい。
観光は、平和で恐怖のない環境ではじめて栄えることのできる産業である。
テロ対策として、空港や航空機のセキュリティ強化に加えて、人々の旅行先、デスティネーション(旅行先)の安全の強化も重要である。テロリストは、各国政府が講じるテロ対策をみて、彼らの攻撃の方法を変えて攻撃をしかけてくる。そして我々はそれに対抗するための包括的な対策を各国が協力して、相互に協調して実施していかなければならない。国際社会全体としてテロ対策を講じない限り、対策は意味のないものとなる。国際社会全体としての有効な対策構築のために、3ヵ月後に観光大臣の会合を召集することを提案する。それまでには、現在米国主導で進められている報復攻撃等の動きの効果等も明らかになっているであろう。
今後、テロ対策にかかる費用を吸収するために、航空運賃をはじめ、各種の旅行業関連の料金の上昇が見込まれる。観光業の成長のためには、この料金の上昇を最低限度に抑えなければならない。    テロ対策に加え、環境破壊や、人身売買、セックスツアーといった問題に適切に対応するための国際的な標準や対策を講じなければならない。
観光業にとって(特に開発途上国において)平和や経済の成長は不可欠のものである。そして人々が恐れのない環境で生活できるよう確保することは何より重要なことである。世界観光機関の役割は旅行に伴うリスク・不安によって、国際的な観光業がその成長を妨げられることのないようにすることである。
 
スピーカー:マーティン・ブラッケンベリー(世界観光機関ビジネスカウンシル会長)
 
国際観光は、自由と平和が保証された社会ではじめて存在し成長することが可能となる。9月11日に米国を襲ったテロも観光業に長期にわたる影響を与えるものでないことを確信する。レベルの高い観光業の成長が既に始まっており、それは今後も続く。その成長の多くは開発途上国に負うところが大である。各国や各地域によって観光業の成長パターンは異なる。ドイツや英国やベネルクス3国でも今後も成長が期待できる。人口動態の変化によっても観光業は影響を受ける。
ホリディトラベル(休暇旅行)のマーケットはまだまだ飽和状況からはほど遠い。
国内的・国際的な量の変化に伴い、旅行業の質の転化・変化も進む。
旅行者の要求・ニーズの多様化に伴い、旅行業側もそのサービスの内容を多様化させている(カスタム化)。ヨーロッパの人にとって、旅行がもはや、贅沢な豊かなものだけが享受するものではなく、より一般化された、誰でも楽しむことのできるものになった。旅行業が過去5年間に経験した変化は、それ以前の50年に起こった変化より大きいなものであった。ヨーロッパの旅行業界では水平統合や垂直統合が進められている。主要な旅行業者は、国のレベルでの営業活動から欧州全体での営業活動へとそのサービス範囲を拡充している(バリューチェーンの統合)。
ナショナル・ブランドから国際ブランドへ成長・拡充するための戦略に基づいて展開を続ける。
世界規模での観光業の発展に寄与していく所存である。
 
スピーカー:カルロス・ボグラー (RCI社スペイン支社長/スペイン)
「タイムシェアのエマージング・トレンド」
 
テロ事件はタイムシェア・セグメントにあまり影響を与えていない。急速に高所得層が増えていることによって、タイムシェアは世界の観光業の中でもっとも成長するセグメントとなった。(アメリカが最も大きな市場である。)
タイムシェアの会社は水平・垂直統合を進めている。会社の顧客層は30万人。全世界的なオフィスネットワークを展開している。お客様本位のサービス(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:CRM)を提供することが重要である。
より柔軟性を求める消費者の需要に応えるためにポイント制度を導入した(最もポピュラーな例:ホリデークラブ、グローバル・ポイント・ネットワーク)。このポイント制度によって、幅広い観光商品及びサービスへのアクセスが可能となった。これは、カテゴリー間の変更・交換を認めることによって、ホリデー・アコモデーション(リゾート宿泊施設)のカテゴリーを多様化させる主要なシステムである。
 
スピーカー:ロルフ・フライターク (IPKインターナショナル社社長/ドイツ)
「21世紀における世界の旅行のトレンド」
 
我々は、新世紀(1914年からベルリンの壁の崩壊までの世紀を終えた1989年に始まった世紀)を既に10年過ごしてきた。46ヶ国でトラベル・モニターを実施している。この調査は、顕在化する以前に、トレンドをモニターすることを目的とする。
米国でのテロ事件によって、旅行のリスクは、新たな段階に到達したのか?湾岸戦争当時より、深刻な影響を与えるのか(危険が生じた時にカタツムリが殻の中に身を隠し、危険が去るのを待つようにカタツムリ効果がしばらく続く)。特定のデスティネーションによっては、深刻な影響が出てくるかもしれないが、それ以外の地域では早い段階での回復が見込まれる。
今後の旅行業の行方を考えるとまず、中国、インドがアウトバンドの旅行のブームを経験する。まずは、これらの国において、国内での旅行の増加を経験した後に海外旅行の数が増える。そして今後20年において持続的な成長をはたすためには、地球環境との共生が重要である。さらに旅行者はさらにより高い価値を求めるようになる。また世界規模で旅行業の標準化が進む一方、高いレベルのトレンド、ヒューマンタッチのトレンドが生まれてくる。そして旅行者は、より個別化されたホスピタリティを求め、それに対応し旅行会社は複数の選択肢を提供する。衛生的な環境が求められ、ハイパー・ツーリズムのブーム。高齢化社会対応の観光業等が今後のトレンドとなろう。
旅行業者は、複数の傾向をもつ消費者に対する有効なマーケティングを開発しなければならない。今後もこのモニター活動を継続し、観光業のゆくえを適切に予測し、報告していく所存である。